全てがちょっと高い…フランスの厨房
a la amargueriteで働き始めた初日、厨房にコックコートで入った私に五屋シェフは言った。
「お前はチビなのか!!」
身長154cmの私なので、まぁ大きい方ではない。
「フランスの厨房は全てがちょっとずつ大きいから、キツイかもしれないぞ。」
そういう意味だったそうだ。
冷蔵庫。一番上の棚に置いてあるものには、背伸びをしてやっと指先が届いた。
シェフは私が使うものは、自分に取り易い位置に移動していいよと言って下さった。
これは盛り付け台。スイッチひとつで手元が照らされる、皿が温まるようにできている。この台も、日本での仕事に比べたら10cmくらい高い位置での作業だった。
そしてこれは作業台。
確かに、10cmくらい高い。切り物をするときでも、それまでの感覚と少し違ってくる。
生地を伸ばすときなんかも、そう感じる。やりにくいという感覚はなかったけれど。
壁の一番高い位置に張ってある、ニコラの手書きレシピ。フランスらしい!
ニコラの達筆はほとんど読めなかった。
これはホールの、いつもまかないを食べていたテーブル。
椅子に腰掛けるときには毎回、よいしょって感じになってしまう(笑)
シェフから、その体格で働くのはキツイぞーと言われたのはよく分かる。
でも新鮮な仕事の面白みがあれば、そんなことは忘れてしまう。
周りは大きなフランス人やアフリカ人達。そんな中で頑張れ、真面目な日本人。
中でも、調理師学校生で研修にきていたフランス人男の子は、2m近くの身長があった。威圧感を感じるほどの長身だった。
その環境で生きるため、私は“それを取ってください!” というフランス語を真っ先に習得したものだった(笑)
日本ではどこの厨房にも、踏み台のようなものがあったけど、フランスではそれがなかった。
OK!といつも親切に応じてくれた優しい周囲。気のいい人ばかりだった。